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繋がりは、点と点が繋がって線になって生まれる。場所も空間も時間も超えて、持つことができるもの。人は手を伸ばせば、どんなものとだって繋がることができます。

ある日、伊那谷にある中川村へ、イエルカ・ワインさんと奥さんの悦子さんを訪ねたところ、今中川村でとても精力的に活動をしている若い友人たちを紹介してくれました。一緒に悦子さんが作ってくれたお昼ご飯を食べながら話す、彼らの会話のやり取りが、中川村の風習がなんとなく表われていて面白かったので、急遽座談会をやらせてもらうことに・・・。

この座談会の参加者は、
イエルカストーブを作るチェコ出身のイエルカ・ワインさん(以下、イエルカ)、
ヤギの毛で絨毯を作る奥さんの関悦子さん(以下、悦子)、
自然溢れるキャンプ場を営んでいる久保田 雄大さん(以下、雄大)、
標高1500mの場所でぶどうを栽培する與語 篤志さん(以下、與語)たち4人の中川村民と、
原村在住でアトリエDEF代表兼LinkLinkディレクターの大井 明弘(以下、大井)です。

大きな共通事項は、「山」と「村」。
会話の中で、過去や未来に目を向けて、これからのことも話しました。
次は、第二部です!
(第一部は、こちら

山で生きる喜びは、一緒に暮らして湧いてくるもの

大井  今ここに住んでいれば山は近いけど、都会に住んでると山は遠いじゃない?なかなか繋がらないよね。

イエルカ  最近は、結構山に行きたいって人は多いよ。だから、山での経験を作るの、これからは大事。

悦子  でも繋がらないと。わたしだって、ここに来る前にキャンプも一度もしたことなかったもの。大鹿村に来てびっくりしちゃって・・・。

雄大  あははは(笑)

悦子  だから、最初は虫も嫌いだったし。

大井  あははは(笑)

悦子  大鹿村に入った時に、黒澤明の映画の世界がここにあるなぁ!と思ったくらい。

イエルカ  7人の侍?

悦子  そうそう。はざかけの豆とかを見たのも初めてだしね。私、出身は埼玉だけども、本当にこんな暮らしするんだって知らなかった。それも一番野生的な人と一緒になったからだけど。

一同  (笑)

悦子  はじめから冷蔵庫は持たないでしょ?洗濯機も持たない。娘が生まれる時も、この中でどうやって、食事の支度しながら生きていくかって本当に悩んだもの。

大井  よく逃げ出さなかったね。

悦子  あはは笑)ほんとね。

イエルカ  よく頑張ったね!

大井  よく頑張ったねって言ってる笑)

イエルカ  大鹿村にいた時に、やっと洗濯機一個入れようってことになって。村のゴミ捨て場にたくさん捨ててあった洗濯機があったから、ある日、私軽トラで行って、3台乗せて。多分動かないから家で直してみようと、そう思って持って帰ったらみんな動いた笑)

悦子  そうそう笑)。だけど、10年大鹿村で暮らしてみて、本当にびっくりしたのは自分の中の変化よね。南斜面でおじいちゃんたちが豆植えたり、小豆植えたり、じゃがいも作ったりしてた。私たちは、いつも一歩二歩みんなより畑が遅れてたね。だけども、一緒に「生きてる」っていうすごい喜びがね、この斜面で豆植えてる時に自分の中に湧いて来たの。「あぁ、この人たちとここで土地を共有しながら、生きてるんだな」っていう喜びが。あれは忘れられなかったね!

火のある暮らしが山を守り育てる

大井  僕の会社アトリエDEF作る家には、必ず薪ストーブを提案するんだけど、面白いのがお家に薪ストーブ入れると子供たちがオーブンにジャガイモでもサツマイモでもなんでも入れて、なんだか楽しそうに作るんだよ!

イエルカ  わたし、薪ストーブ入れる人はそういう体験が欲しい感じがするね。ここに来る人たちもみんな、特別なセレクションと思うね。

悦子  以前、ここに来たある女の子はアトピーがひどくてね。みんなでピザを食べようとした時に、アトピーで小麦粉がダメだったから、たまたまあったお米の粉でピザ焼いたの。そうしたら、本当に良く食べてってくれてね。忘れられないね、あの子は。

イエルカ  うん。

大井  なんで僕は、家づくりに薪ストーブを入れるかっていうと、家が温まるだけじゃなくて、そうすることでそこに暮らしができるような気がするんだよね。で、そこに薪ってどうしても必要じゃん?

雄大  そうなんだよねぇ。

大井  薪を調達することで、山と繋がっていく。何より薪作りを家族みんなでするっていう行為がね、暮らしを作ってるって体感できる。

悦子  それは面白いわよね。火との関わりも人間は、縄文時代よりもっと昔からあったことだし、やっぱり火を見るっていうことは大切よね。

雄大  そうだね!

イエルカ  わたしもそう思う!火は、人間の古い面を呼び起こすね。

雄大  本当、そうなんですよね。炎を見ると懐かしいように思う。

イエルカ  この間、友人が心が傷ついて外にあまり出れなくなった女の子を連れて、家に来たね。そこで彼女に、マッチの火で薪ストーブをつけてもらって・・・そしたら、表情がすごい明るくなった。やっぱり火は、人間とすごい友達ですよ。

大井  太古の昔から、火は大事なもんだったよね。獣にしても、人間が生きるにしても。今、マッチも擦れない子がたくさんいる。僕らは子どもたちに少しでも火に触れてもらいたいから、薪ストーブだけじゃなくて、かまどを作ってるんだよ。昨日も会社にあるかまどで2歳の男の子と一緒にご飯を炊いたんだけど、その子が楽しそうにかまどの火に向かって、うちわでパタパタってやるんだよね。

イエルカ  それすごくいいね!子どもと一緒にやるのがいいね。

雄大  僕は、火が身近にあるような家で暮らすのは、すごい大学に行くよりとても教育的だと思う。

大井  火は大人にとっても大事だけど、子どもにとってもすごく大事な存在だよね。僕らはこういう生き方や暮らし方を伝えていかないと、山は守れないんじゃないかなって思ってるんだよ。

雄大  確かに、身近にある自然をケアしていくことにも繋がる。それが肌でわかってると、地球全体もケアする人間に育つと思う。でも、そんな暮らしが完全にシャットアウトされている人たちがたくさんいますよね。

イエルカ  でも、自然に関心を持ち始めた街の人たち、すごい増えてる気がする。やっぱり、山に入りたい、山に戻りたい。こういう人いっぱいここに来るね。だれど、都会の生活にはそうやって暮らすチャンスはないね。

悦子  そうね。せっかく田舎に来て何か感じたとしても、都会に戻るとまた埋もれてしまうわよね。

雄大  今キャンプ場って世界的にすごい人気で、事業としてはすごく伸びてきているんです。だから僕思うんですけど、世界の半分の人はまだキャンプっぽい生活していて、こういう人たちはキャンプには行かない。だけど、完全に無くなった人たちはキャンプに行きたくなってる。無意識かもしれないけど、火のある暮らしを求めているんじゃないかって思います。

山を守ることは、水を守ること

大井  今の仕事をしていく中で僕にとって山は守らなくてはいけない存在になってるんだけど、イエルカにとって山ってどんな存在?

イエルカ  わたしにとっては、山はおっぱいね!お母さんたちだと思ってる。

雄大  その言い方いいなぁ(笑)

悦子  面白いわね(笑)

大井  母なる山、確かにそうかもね。僕は今の暮らしの中で、山の恩恵がすごく感じているんだよ。だから、山を良くするためには、もちろん山の整備も大事だけど、やっぱり人の生き方が変わらないと山も良くならないっていうのが長年の活動と暮らしの中でだんだん分かってきてね。山から流れる水で山と海も繋がっているから、山を守ることは海を守ることにも繋がるんだよね。それにね、水は人の健康にも繋がっている。人の体の7割は水でできているから、生きるには水が必要だよね。だから、その水が良くなんないと、本当の健康って取り戻せないんじゃないかなぁ。

與語  確かにそうですよね。

イエルカ  水は大切な自然だよね。だから、山をいじって何か作ってたり、土に帰らないものを埋めたりすると水はダメになっちゃうね。ここの山の上に、産業廃棄物の処理場ができる話があったのね。私たち、大きい運動起こした。この辺の人たち、普段は署名とか運動とかやらない人たちだったけど、この時はすごかったよ。公民館で毎晩集まって話し合ったり、いろんな「反対」の紙を作ったりして。そして、処理場を辞めさせたね。

悦子  そうね、あったわね

イエルカ  それから、福島から出るゴミの処理を引き受けるとお金になるからって、今この辺りの会社もその仕事をしている噂があったりしてて。本当にやっていたら、私たちも怖くなるね。今度、この近くで大きい工事あるしね。

悦子  近くで護岸工事してるの、今ね。

イエルカ  あんまり意味のない工事だと思うから、もしかしたらゴミの処理の為じゃないかってね。

悦子  誰も見てない時に地中に埋めてるんんじゃないかって不安になるのよね。

イエルカ  そうじゃないとは信じたいけどね。こういう時代だからこそ、やっぱり山を守ることは本当に必要で、すごいすごい大事ね。山に寄り添って暮らす人は、みんなわかってる。

伊那谷の土地を表現したワインを作る

大井  余語さんが今やってみえるナチュラルワインを作るのにも、キレイな水と土は大切なアイテムだよね。

與語  そうですね。

イエルカ  彼は、このあたりの土地でナチュラルワインのためのぶどう畑を作りたいって来たね。

大井  どうしてここで始めようと思ったの?

與語  ここに来るきっかけとなったのはですね。まず、僕が名古屋でワインショップをやっていた時に、変な外国人のおじいちゃんがやってきて、めちゃくちゃたくさんワインを買うんですよ。

大井  え!?イエルカ名古屋までワイン買いに行ってたの?

與語  一回だけですけど。名古屋まで来てくれたんですよね。その時の縁で、ここに遊びに来たことが大きなきっかけになりました。イエルカさん、最近はワイン、ちょっとセーブしてますけどね(笑)

イエルカ  わたしワイン大好きですね。

大井  知ってるよ!好きだからたくさん買ってたんでしょ(笑)それで中川村に来て?

與語  来てみて、やっぱりここの自然にすごい感動したんです。ぶどう畑は大鹿村にあるんですけど、もっと山奥に中央構造線っていう面白い地層があって、それも良くて。ちょうどその頃に、僕のワイン作りの師匠に会っていて、「そろそろいい場所見つけますか?」っていう話が出てたころだったんで、「あぁ、じゃあこれも何かの運命かもしれないなぁ」って思いました。その後、大鹿村の役場に行って、ワイン畑として使えそうな場所を教えてもらったのですが、標高1400~1500mの場所しかないって言われて。

イエルカ  でもね、ものすっごいキレイなところだよ。

雄大  昔は牧場だったところですよね。

與語  牧草作るために30年くらい前に切り開いた場所だったと思います。その後は、だいぶ放置されていたみたいですけど。そこを師匠にも見てもらったら、「なかなかいいんじゃないか」って話になったんです。「ロマンがある!」っとか言い出して(笑)。

イエルカ  與語さん、清水の舞台から飛んだね(笑)。

與語  そうですね。でも、ちょうどイエルカさんが40で大鹿村に入って来たのを聞いて、その時僕も40だったんで、僕もこうゆう人生を歩み出すタイミングかなぁと思って。

イエルカ  タイミング良かったね(笑)。

與語  どうせやるなら、本当に日本一のワインを作りたい。その大鹿村の土地が、神秘的な場所だと感じたので、そこに掛けてみようかなぁと・・・。

イエルカ  あの場所を表現したワインは、もう絶対素晴らしいね!

悦子  そうね。

大井  もう、そこにはぶどう植えたの?

與語  1500本だけ植えてました。3年前にちょろっとテストで植えてみたんです。

イエルカ  動物のための柵を作ったりして、結構大変なのね。彼の名古屋でやっていたのナチュラルワインのお店は、名古屋にあるレストラン何件も付き合ってるね。そして、その人たちを山に連れてって手伝ってもらったり、結構してる。だから、こういう活動も街と山の繋がりになってるね。

雄大  すごくいいじゃないですか。

與語  名古屋の人たちにとって、ぶどうの産地で有名な長野や山梨って少し遠かったんですよね。でも、ここならぎりぎり通える。畑のぶどうの成長や収穫の楽しみとか、あとこの地域の風土的なところを感じてもらえる場所が作れるんじゃないかなぁと思った。それで、今度9月に雄大さんのキャンプ場で、名古屋の飲食店さんに来てもらって、イベントを行う予定でいます。その人たちも大鹿村を好きだと思ってくれているし、みんなイエルカさんの大ファンだから。そういう繋がりを持って、一緒に過ごしていけたらすごくいいなぁと思ってますね。

イエルカ  みんなナチュラルのレストランの人ね。無農薬のものばっかり扱ってる人たちでね。彼は、名古屋で150店以上のレストランの取引先を持ってるんだよ。

與語  でも、それくらい名古屋でナチュラルワインを扱っているお店って少ないんですよ。

雄大  余語さん、肥料とかどうしてるんですか?

與語  僕は他所からなるべく持ち込まないで、この場所のものだけで作りたい。あの場所を表現するならね。

イエルカ  それ、いいと思うね。

與語  ただ、フランスのナチュラルワインの生産者から、土地は痩せてた方がいいって聞いたんだ。ぶどうは下に下に根をはって養分を取るから、その方が丈夫に育つ。地上では生態系のバランスだけをいかに整えていくかってことを配慮して、肥料はあんまりあげない。日本のワイン農家では、結構肥料を使ってますね。日本で一番標高が高いから、ぶどうの成長は遅いんじゃないかなぁって思うんですけどね。だから、ゆっくりゆっくりやっていこうと。

悦子  そうね、成長は遅いかもしれないけども、一度根付いたらならば、すごくいいぶどうになるんじゃない?

與語  それを狙って、がんばってます。

都市との繋がりも大切にして、山を守っていく

與語  僕は名古屋に繋がりがあるってことが、今とても大事なことだと感じてて。

悦子  あたしね、余語さんの仕事が都会の人たちと繋がりを作っていて、すごくいいと思う。

大井  そうだね。

雄大  僕らのキャンプ場もお客さんの4割が名古屋で、4割が東京なんですよ。この土地にある本当の自然の中の営みに、都会の人が関わってくれることが、僕らとお互いにいいことなんじないかと思うんです。僕らもそういう関わりがないとやっていけない部分も正直あって。でも、こういう本当の赤石山脈と地続きなことを感じられる畑とかを都会の人たちに感じて欲しい。

與語  本当に一人だとね、ちょっとやってけないなぁとかすごく思う。

雄大  そうですね(笑)!

與語  すごくいろんな人にお世話になっていて、今ギリギリやれてるって感じがすごいするからね。

イエルカ  今の時代が抱えてる問題いっぱい大きいのあるね。でも、いろんな問題の答えは田舎にあるね。だから、山に勉強に行くことはとても大事。もう一度、自分を発見させるためにも、やっぱり山ですね。

一同  うんうん。

イエルカ  わたしのお父さん、お母さん、ロッククライミングしてたね。二人すごい山好きだった。私は戦争が終わるちょっと前に生まれたのね。戦後すぐに、二人はチェコの北の山の方にいい山小屋を手に入れて、そして毎年二ヶ月は過ごしたね。それは私の人生の中で、すごい影響だった。だから、大きくなったら山で生活したいと思った。休み終わって、山小屋から街に戻ると突然全部真四角ぽいの世界になる。だから、山の世界には、池だって森だってあって、戻りたくなったね。

與語  イエルカさんが僕と会うと、よくこの自然のことを語るんですよ。ここでは、自然の動きを日々気にしてるじゃないですか。本当は、自然全てのものが流動的に動いてるんだけど、名古屋とか東京とか行くと、無機質なものにどうしても囲まれちゃってて、それがちょっとわかりづらい。大鹿村の畑にいると、毎日ぐわって全体が動いてるのがわかって、それも毎日違ってて。

イエルカ  それがすごいよね。

與語  あの感覚を、もっと都会の人にも感じてもらいたいって思うんだよね。ここに来て、気持ちいいってことはすぐわかるんだけど、そうじゃなくって。自然が俺らのスピードじゃないから、すぐにはわかりにくいところもあるかもしれないけどね。

雄大  花が咲くと虫が来て、虫が来ると獣が来て、蛙が来て、蛇が来て、トンビが来てっていうスピードね。

與語  うん。生き物もそうなんだよね。全ての要素がぐぐって流れているのを都会の人にも伝えたいですね。

イエルカ  こういう若い人の輪がほんとうに大事。

大井  そうだね。だから、人も自然も大切にしていきたいね。今日は良い話をたくさん聞かせていただき、ありがとうございました。

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