長野県上田市を拠点に、様々な造園を手がけて来た庭師の赤尾和治さん。赤尾さんが手がける仕事は、化学肥料や環境破壊を促すような工法は使わず、大地本来の力を取り戻すための様々な工夫を凝らした「大地再生」の土づくりが中心です。その活動は庭仕事に留まらず、棚田の再生プロジェクトに関わったり、昔の水脈を復活させる整備を行ったりなど、未来に残していく自然環境をより良くする活動に精力的に取り組まれています。なんて真面目に書きましたが、ご本人はとっても気さくで男らしい職人さん。「仕事は、俺の生き様!!常に全力で!」人に、自然に、動物に。生き物すべてに調和が取れる環境づくりに、愛と情熱を捧げていらっしゃる方です。
今回は、赤尾さんに「自分でできる良い土づくり」について詳しくお聞きしました。
1、庭にも、山と同じ環境づくりを。
おー: 大地の力って、普段わたしたちにとって、とてもスケールの大きなものに思えるのですが、身近なところでも感じられることってありますか?
赤尾: 身近なところで言えば庭で、木を植えたり、作物を育てることかな。植物って、グランドみたいな平坦なところで育てようと思っても、なかなか育たない。地形と同じように起伏があった方が、植物が育つのに必要な空気と水の流れがうまく循環する。
まずね、土を掘ってみて、硬いところは解してあげる。植物を植える時も、少し盛り土をして、小山を作るような感じで植えてあげる。そうすると、上から大気圧で空気が降りてくるんだけど、一定の圧が上からどんってかかるんじゃなくて、すーっと山から沢に降りてくるように空気の流れ、水の流れができる。
おー: 庭の小さな小山でも、山で起こる環境に近いものが起きてるってことですか?
赤尾: そうなんです。地中の空気通しをしてあげて、小山をつくって、そこに植物植えてあげる。水はけの悪い場合は、水脈を入れたり。それだけで、全然生きかたが違うんだよね。
あと、風通しも大事。余計な草や枝を抜いてあげて、風通しも良くしてあげる。地上にもそういう状態を作っておく。
おー: ギュウギュウにならないよう環境を整えてあげるっていうのが、人の役割ってことですか?
赤:うん。その一番勉強になるのが林の中。理想的な森っていうのは、日も指すし、小鳥がスーっとね、木々の間を飛んでいくような森が一番豊かな森というか。いろんな生き物も過ごし易いじゃない?だから、庭でも同じように、風通しや日当たりも考えてあげながら植物を植えてあげる。
おー: 環境を良くしてあげることによって、植物が自分たちの力でハツラツと生きていくことができるってこと?肥料はいらない?
赤尾: そうそう、そうなの!土の力があれば大丈夫。だって、土が健康じゃないと結局、作物にも植木にも人間にとっても、気持ちいい空間でなくなっちゃうから。
2、土の力を取り戻し、フカフカの土を目指す!
おー: 最初から平らに固められた土地の場合は、具体的にどう土を良くしていくのがいいんですか?
赤尾: 落ち葉だとか植物の繊維のようなチップ、そういうものを土に入れて、肥やしてあげればいいんだよ。山の木なんか、誰も肥料くれなくても生き生きしてる。それは、腐葉土ができてるから。
おー: 腐葉土・・・ホームセンターでも売ってますよね?それでもいいんですか?
赤尾: 完熟のものであれば大丈夫!
おー: それを混ぜてあげることによって、最初カチカチだった土がふわふわになる?
赤尾: そうそう。いい微生物、バクテリアたちがその植物の繊維とか有機物を分解しながら、空気通しの良い健康的な土にしていってくれる。フカフカの山の土って、手入れるとあったかいのは分解している時の熱もあるのかな。理想は、健康的な山の土だね。
虫に対しても、植物の根が健康だったら、抵抗力をフルに出せる。そうすると病害虫もつきにくくなる。
よく防虫スプレーとかあるけど、あれは地中の微生物まで殺しちゃうんだよ。微生物がいなくなると肥料や養分がなくなっていくから、化学肥料をあげることになる。
おー: 土のことを考えると、悪循環ですね。
3、今の環境と上手に付き合う、炭を使った仕組み。
おー: 腐葉土以外は、何かいれますか?
赤尾: あとね、炭入れてあげるといい。植物の根って、炭に向かって伸びるから。消し炭のちょっと固め物がいい。
おー: 炭に向かって伸びるってことは、下の方に埋めてあげるってことですか?
赤尾: そうそう。あと、畝の縁とかね。
そう、炭ってね、昔は神社を建てる時必ず縁の下の地下に、炭を埋めてたんだって。社地下って言って、気持ちいい空間になるっていう。土地が浄化されるんだね。
おー: 面白いですね 笑
赤尾: ちょっとスピリチュアルな方に行っちゃった 笑
ほんと、炭は万能なの。
おー: 水が綺麗になったりとかもしますしね。
赤尾: そう!住宅でも炭は使えるよ。
例えば、傾斜地にある土地で、低い方をコンクリートの擁壁で三方囲んで、道路にはVSって言うコンクリートの水路がある。そうやって、コンクリートで囲まれてると、雨がなかなか染み込みにくい土地になってちゃうのね。その地中では、空気が淀んで基礎の下の砕石のところに水溜まりやすくなる。で、その水がずっとそこにあれば、腐るよね。それがじわじわと地上へ上がってくるわけだ。そうなると、木を植えてもなかなか育たないなぁとか、妙にモワっとしてる空間になってたりとか、気持ちいい場所じゃなくなる。
おー: 嫌な空気が漂ってそうですね。
赤尾: そこで、基礎周りに穴を掘って、炭を入れてあげる。更に、その上には枝や竹を立てて空気の逃げ場を作ってあげるんだよ。これが天穴。
他には、地中でパイプを使って水通しと空気通しを良くしてあげる。土地の状況から、地中で空気が淀むのわかってたら、それを抜いてあげないといい空間にならない。
おー: 今はもう、擁壁ができてたり、道路ができたりとか当たり前だけど、それらがじわじわと環境破壊してることには気づいてない人の方が多い気がする。でも、家庭家庭で、その自分の周辺の環境だけでも良くしてあげることはできるってことですね!
赤尾: そうなんですよ!部分的かもしれないけども、そうゆうことをやれば、地中の空気と水の淀みを改善できる!土も良くなって、植物も育つ!
おー: ここで植物が育ち、木も育ち、山のようないい土作り、いいサイクルができると。その全ては土だー!ですね。
4、酸素と水と土さえあれば、それでいいのだ。
赤尾: で、最初の話に戻るわけだ 笑
おー: 庭づくりに戻るわけですね 笑
赤尾: そう。まず平坦なところをね、こう溝を掘るわけよ。で、掘った土をこう置いたりするんだけどね。そうすると山ができて、こう大気圧がかかってくる・・・あ、絵描いてやる!
おー: ありがとうございます! 笑
赤尾: そうすると、小山の斜面を滑って水と空気が浸透して、平坦なとことから抜けてくる。で、地中から水蒸気とかも、こう上がりやすくなるじゃん?起伏ができて、表面積も増えるから、いろんな空気の流れができてくるわけ。そうすると周りの土もどんどんその連鎖で、柔らかくなるんだよ。
最初は試しに少し浅めでもいいから。時間が経って、底の土が柔らかくなれば、もう少し深く掘ってあげるといいね。
畑もおんなじ。
おー: 畝の横を掘った方がいい・・・あぁ!通路ってそういう役割もあるってこと?
赤尾: そうだね。雑草もね、適度に生えてていいの。根を張って、空気穴作ってくれるから。今の畑はキレイにしすぎだよ 笑
おー: そうなんですよ、雑草あれば「抜かなきゃ!」って。なんか、土の栄養分を雑草に取られちゃうイメージがあって。
赤尾: 雑草の方が元気になっちゃうってね 笑 それは多少あるかもだけど、土が良ければ自然農で全然大丈夫だよ!
有機質のたっぷり入った土はね、「泥上げ三回肥料いらず」って言って、雨で流れ落ちた畝の土を、また上げてやるの。溝を掘って。それを三回やれば、肥料いらない。
おー: そういう仕組みを知っていると「やってみたいなぁ」ってなりますね!
赤尾: でしょ?更に畝の横にも、さっき話した天穴の小さいものをいくつか作る。そうすると、更に酸素が地中で通うから。植物の根ってのは、酸素を求めて伸びるからね。水だけじゃないんだよ。
盆栽見ればわかる。盆栽ってA3くらいの鉢に、こんな太い松とか真柏とか植えてあって、500年も生きてるんだよ!?すごくない?理屈は、空気通しだよ。根が暴れて詰まってくると、少しほぐして、根を切って、上の枝とかも軽くしてあげて、で植え替えるわけ。
おー: なるほど!
赤尾: 後はほとんど水だけだもんね!
その状態を畑や庭なんかでも、やってあげる。それを考えてイメージしてれば、ベランダでもできる。
おー: すぐできますね!穴掘るだけでもすぐできるし、炭を入れて、溝には竹や小枝入れてあげて・・・その辺にあるもので、作れるってことですね。
赤尾: そうだよ。いろいろやれるんだから。イメージして、楽しんでさ!
おー: 人もそのサイクルの中の重要なポジションですね!赤尾さん、今日は本当にありがとうございました!