お料理は奥が深い。
さっと済ませようとすれば出来合いのものを購入することもできるし、外食することもできる。
でもこんな世の中だからこそ、心にしみる一品を食卓に並べたい。
そう教えてくれたのは前橋市にある自然食品店サンデールームの出仙さんです。
今はお店でお料理の提供をしていないそうですが、以前朝ご飯をご馳走になったことがありました。
「朝ご飯と言ってもそんなに豪勢なものはないけれど・・」
そう言って用意してくれていたものは、混ぜご飯のおにぎり、味噌汁、漬物、小鉢が1,2品だったと思います。
味噌汁は出汁がきき味噌との調和のとれたもので、朝起きたばかりの身体にすっと入っていきました。
小さめのおにぎりは食べやすく、ふわっとしており小腹のすいた胃袋を満たしてくれました。
漬物の小鉢も、多すぎず、少なすぎず、食べる人と時間帯をよく考えてくれていることが伝わってくる献立でした。
キッチン付きのスペースでお料理教室をやってみようと思った時、迷わず講師をお願いしました。
そして快く承諾してくださり、月に一回程度お願いしています。
「料理教室と言っても巷で流行っているようなお料理教室はできません。私が日々実践していることを見てもらう程度しかできないけれどそれでもよければやりましょう。でも実際にお料理を食べてくれたことのある人にやってほしいって言われるのがすごく嬉しかったです。」
そうおっしゃって引き受けてくれた出仙さん。
私もそう言っていただけて本当に嬉しいです。
お料理教室はテーマに合わせて進んでいきます。
第1回目は基本を学ぶ会としておにぎりの作り方を教わりました。
ご飯と言えばかまど。
そう。お料理会場として使わせていただいているスペースの外にはかまどがあるのです。
今回はかまどを使ってご飯を炊くところから始めました
いつもはスイッチをポンと押せばタイマーのかけた時間に炊き上がるのがご飯。
今日は遅くなるな~なんて場合はタイマーをセットして帰ってきたら買ってきたお惣菜とご飯。なんて人も多いのではないでしょうか。
かまどなんて・・・すごい手間。時間もかかるし。
いえいえ。すぐに炊けてしまうんです。
そしてその炊けるまでの時間がとても興味深いものなのです。
火をつけて、羽釜を乗せます。
少したつと
あ。音がしてきたかな?この木の棒を蓋に当ててみてください。音が聞こえませんか??
そう言って木の棒を貸してくれたのは、今回の会場である工務店、アトリエデフの大井社長です。
慣れた手付きでさっと火をつけ、ご飯を炊く準備をしてくれました。
早速木の棒を蓋に当ててみると、中の音が棒を伝ってぶくぶくと聞こえました。
これはご飯と一緒に入れた水が沸騰している音です。
段々音が弱くなって、最後は水がなくなり、羽釜の周りの水がパチパチと音を立てるともうすぐ炊き上がりの合図です。
炊けるまでわずか20分くらい。
でも時計で時間を計るのではなく、音と匂いで炊き上がりの具合がわかりますよ!
するとあっと言う間にいい匂い。
最初は何か食べ物の匂いがしてきたのですが、時間がたつにつれてお米の匂い、ご飯の匂いと匂いが変わってきました。
ご飯は炊けてから10分以上蒸らします。
その間に羽釜の中でご飯が整ってきます。
ご飯の匂いに変化があるなんて、想像したこともありませんでした。
こうしてみんなで見守ったかまど炊きご飯は、蓋を開けてのぞきこみたい気持ちを抑えてデッキで蒸らすことになりました。
さて台所ではいろいろな発見や学びがありました。
例えばお味噌汁の具材。みなさんはどうやって具の大きさを決めていますか??
いつもの切り方?
いつもの大きさ?
「誰とどういう状態で食べたいか」を考えてください。
今日は時間があるので、野菜は大きめに切りました。その方が野菜の味がしておいしいです。
でも時間がない時は、火が通りやすいように小さめに切りましょう。
決まった切り方はありません。それぞれの感覚で切っていいです。
なるほど。
いつも時間や相手を考えずに料理をしていたなと改めて感じました。
子供が野菜を食べないのはどうしたらいいでしょうか?
主婦のみなさんが頭を抱えているところではないかと思います。
身体にいいものをと思いがちですが、それよりも丁寧なものを食べさせてあげましょう。
子供が食べないものは拒否反応だと思って、食べさせるのを止めてみましょう。
無理に食べなくても大丈夫。食べたいものを食べてもらいましょう。
ニンジンが嫌。
もしかしたらそのニンジンが嫌いなのかもしれません。
農薬を使わずに育てた甘みの強いものを使ってみてはいかがでしょうか?
今まではニンジンが嫌いと言っても無理やり食べさせていたというお母さんも納得。
帰ったら他の方法でニンジンを食べさせてみよう、と嬉しそうでした。
きっと将来お子さんが病気になったとき、お母さんが真剣に作った何か一品を食べてホッとするのではないでしょうか。
みなさんには何でもいいので真剣に作れるものを丁寧に作ってほしい。一つでも二つでも構いません。
おにぎりを丁寧に作るでも、味噌汁を丁寧に作るでも構いません。
きっとお子さんに気持ちが伝わるはずです。
疲れて家に帰ったとき、お母さんの味噌汁をのむと落ち着く。
そんな人も多いのではないでしょうか。
知らないうちにかもしれませんが、お母さんが丁寧に作ってくれた味噌汁がホッとする魔法のアイテムになっているのです。
お料理に必要なものは色々あります。
道具、食材、レシピ。
どれも大切です。
しかしその時の相手や状況、そのお料理に対する気持ちはいつでも必要な、そして少しの工夫で取り込める大切な要素のように思います。
忙しい人に来てもらいたい。
お料理に自信がない人に来てもらいたい。
そうおっしゃっていた出仙先生。
お料理はたくさんの愛情や思いやりで作るものなのだと気づかされた一日でした。