report

先日、木で作った環境に優しい素材があると聞き、北海道へ飛んできました!
聞くところによると、その技術は環境先進国ドイツで開発された技術とのこと。
いったいどんな素材なのか?どんな性能を持っているのか?
さぁさぁ、素材の旅へ出発です!

北海道までは、羽田空港から飛行機に乗り、新千歳空港到着で約一時間半くらい。


離陸した空から地面を見下ろすと、建物や道路など、灰色の下地に建物や緑が乗っかっている印象。
海周辺は埋立地なので、四角くきれいに区画整備された土地が広がっていて、人工的な感じでした。


一方、北海道は圧倒的に畑、田んぼ、森などの緑や茶色の自然の色ばかりで、なんとなく空気も美味しそう。
緑がたくさん残っている広大な土地がベターっと果てしなく広がっていて、空から見ないと全体像はつかめないなぁと思いました。
これでも北海道のほんの一部・・・実は初めて北海道に来たのですが、やっぱり北海道はでっかいどうでした(これはもう死語??)

今回の目的地は、北海道苫小牧市。
新千歳空港から車で十数分の場所に、目的の会社はありました。


株式会社 木の繊維さん。
創業10周年を迎える、まだ比較的新しい会社さんです。
この苫小牧工場は、環境保全・環境負荷軽減・地球温暖化防止に最大限配慮した製品づくりを行う工場となっています。

主に作っているのは、北海道の針葉樹を原料としたウッドファイバー」という木質繊維断熱材。

元々ドイツで生まれた素材だそうで、北海道で木の研究をされていた方たちが「ぜひ日本でも作って行きたい」と思い、北海道の針葉樹を使った研究が始まり、実用化されたもの。
木の香りはさほどしませんが、触って見るとフワフワとクッション性があり、木の繊維のチクチクもしません。
そして、断熱性能がとても高いのも特徴です。

実際に照射実験を見せてもらいました。
表示されている温度は素材の中間部分の温度で、右から、羊毛、グラスウール、ウッドファイバー。
特徴はみな異なりますし、それぞれ適した工法もあるので一概にこれで一番断熱性能が優れているということにはなりませんが、ウッドファイバーは熱を遮断する力が強い=熱伝導率が低い素材と言えます。

さて、製造工程は企業秘密ですのでお見せすることはできませんが、少しだけご説明します。
こちらの工場にある大きな機械は全てドイツ製で、実際にドイツの工場でも使われていた機械を輸入しています。
全てコンピューターで制御でき、その技術もドイツで教わり、生産しています。

表記も全てドイツ語なので使い始めたばかりの頃は、不具合などあるとドイツの技術者を呼んで直してもらっていたんだとか・・・
生産をはじめ、一年近く経った頃ようやく機械やコンピューターの仕組みがわかり、社員の方達でなんとか機械も調節できるようになってきたそうです。
それまで日本で実例がない技術なので、とても苦労されたと思いました。

材料は北海道の針葉樹の間伐材。主に「トドマツ」と「カラマツ」。
北海道のような寒冷な気候に順応できる木として、道内至るところで植林されているそうです。
それらをチッブ状に加工したものが、林業会社から工場に運ばれて来ます。

それらを繊維状にさらに加工し、難燃剤をまぜ、ボイラーで乾燥させます。
製造過程に使用するエネルギーには、バーグ(木の皮)や使用できなかったチップなどを使い、化学燃料は一切使用していません。
その後、結合剤を混ぜて成型器で圧縮し、パネルを整形します。
あとは、サイズに合わせてカットし、梱包。
ほとんどの工程がコンピューター制御ですが、チップが繊維化されたその状態だけは、人の目で確かめます。

この質感や繊維の細かさは、同じように機械にかけても、原料の木、チップの状態、その日の環境などさまざまな状況で変わってしまうそうです。
求めるのは、断熱性能!ということで、

いくつもサンプルを作り、日々の出来具合を調べ、データを蓄積しているそうです。
今では、触った感触と目視でだいたいわかるようになってきたとのこと。

こうしてできた「ウッドファイバー」を、実際に施工してみた小さな実験棟を見せてもらいました。

中には、ウッドファイバーが敷き詰められており、筋交いのところは一つ一つカットしたとのこと。
少し手間のかかる部分ではありますが慣れれば早いもんだそうで、隙間にギュッと押し込めればタッカー等しなくとも固定され、ずれ落ちてきません。
危険な物質もでないので、現場で木屑が多少出るのと同じ程度。大工さんにも安全・安心な素材です!

こんな感じでむぎゅむぎゅに詰まっています。
しかも、断熱だけでなく防音性能もとても高く、ウッドファイバーに耳を当ててみると向こうの騒音とかほとんど聞こえませんでした。耳を話すと聞こえるのに、本当に不思議。音を吸収してくれているようです。

実は、まだまだ課題はいろいろあり、機械がドイツ製ということもあり、原材料以外のものは海外から取り寄せている材料だそうで、これから先も試行錯誤はしていきたいとスタッフの方にお聞きしました。
いずれは100%自然素材も目指しているそうで、これからの取り組みが楽しみです!

帰りに近くの湖へ少し寄り道を。
海のようにも思えるほど広ーい湖ですが、ここは野生の渡り鳥たちが行き交う憩いの場所だそうです。
この日は鳥たちの声が聞こえるだけで、実際に出会えませんでした。
北海道を少し堪能した帰りの飛行機で、今私たちの暮らす場所が手付かずの自然に近づいていくことを夢見て、互いに共存できる環境づくりをこれからも見つめていきたいと思いました。

 

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